完璧な人間なんていない

去年の11月、合コンに参加した
とくに彼氏が欲しいとかではないが
ま、クリスマスも近いし?あちらが付き合ってというのであれば?やぶさかではなきにしもあらず?くらいの心持ちで参加した (友人からは「何様だ」という言葉を頂いた)
こちら側のメンバーは私、女性側の幹事である友人、先輩2人の計4人
駅に降り立った私に
友人から「むこうの幹事はもうきてるよ」と連絡があったため
急いで梅田・ドン・キホーテ前へ
2、3分遅れたが、四捨五入したらセーフだろと思い、待ち合わせ場所に着くや否や
「おまたせ、私のせいじゃなくて向かい風が強くてさ」と半笑いで言い訳をしたところ
友人はそれをさらっと受け流し
「こちらが幹事のk君」と言って男性側の幹事を紹介してくれた
顔をあげて彼を見上げる
身の丈180はありそうな長身
形の整った唇、スッと通った鼻筋
綺麗な二重に澄んだ瞳
清潔に切り揃えられた黒く短い髪
え?王子様???
「ごっっっ遅れてすいませんっっ肉美です……」
秒速でこうべを垂れてしまった
この私が?馬鹿な…っ
ドン・キホーテの軽快なBGMをバックにアスファルトをみつめ絶望する私にk君は
爽やかな声で、「全然!遅れたうちにはいらんよ」
と笑ってくれた
笑うと目もとがくしゃっとなり、ちょっと少年っぽい。笑顔も可愛い上に声もいいとかなに?
先ほどの自分の遅刻の言い訳を思い出す、なんであんな軽口を叩いたのだろう
初手から間違えてしまったことに打ちひしがれていると
先輩たちが「遅れてごめんごめ〜んMr.オクレ」などとおもしろくない事を言いながらヘラヘラと現れた
そのニヤつき、今に後悔するぞ、と思っていると
先ほどの私と同じように友人からk君を紹介された途端、2人は顔つきがかわり「やだ♡かわいい♡」「イケメンっていわれませんか〜?」
と口々に言い、ふたりともマッハでほの字になった
初速がエグすぎる
k君はそんな先輩たちを笑顔でさらりとかわし
「じゃあ行きましょうか、ちょっとだけ歩きます」といってお店まで先導してくれた
(あなたとなら北海道まで歩くが?)
と思った、しかし同時にそんな自分を情けないとも感じた
さっきはじめて会っただけ、私はこの人の事、見た目しか知らない。
なのにもうすでに即堕ち2コマじゃないか私は
見た目で人を判断するような人間なのか私は、恥を知れ
人間大事なのは、見た目ではない、中身(魂)だ
多分k君はこの仕上がりなのでそれはそれは大層モテてきただろう
だからここで即堕ち2コマしてはダメ
今までの女性と一味も二味も違うってとこ、みせなきゃ
ここでk君狙い、媚びルートにはいってしまうとすげなくかわされエンディングってわけ、
だからここは「あんたなんて、全然かっこいいだなんて思わない」この方式でいこう
漫画やドラマで予習したから知ってる、この方式にあてはめた場合、k君の答えはひとつ
「ふーん、俺になびかねぇなんて、おもしれー女(絶対振り向かせてみせる…)」
Q.E.D.証明終了
これが私の恋の方程式
お店へ歩をすすめる友人の耳元でこの方程式をこっそり発表してみたところ「ふつうに嫌われると思う」と貴重な意見を頂いた
それもそうだと冷静になれた
少しまわりが見えるようになったので前を歩く先輩に、「幹事君かっこよくないですか?」ときいたら
「合格♡」とか言い出して鼻水ふいた
先輩ヒソカっすか

お店に行くと他の男性陣はもう集まってくれており、皆さんとても素敵で面白い方達で、料理も美味しいし楽しかった
それはちょっと置いといて、その時のk君はというと
ドリンクはこまめにきいてくれるわ、よく笑ってくれるわ、みんなに話をふってくれるわ、目を見て話してくれるわ、料理を取り分けてくれるわ、男性陣とも楽しそうに、どんな話にも相槌打つわ、無双状態だった。
中身(魂)もいいのか、君は
天下無双だ、君は
Perfect human だ君は
解散の時も、「この8人でグループLINEつくっておくね」とLINEまでさらっと交換させてくれた
k君のご先祖様、きこえていますか?
あなたたちの子孫は完璧ですよ。
あなたたちの家系図へ仲間入りしちゃおうかな?なーんちゃって

男性陣と解散し、私と友人と先輩たちはカフェへ
合コンのメインはもはやここの部分といっても過言ではない
私が、「じゃあ、せーのでいいなと思った人の名前言おう」と提案すると「それがいい」と、みんなすぐにのってきた
「せーの」
「「「「k君」」」」
知ってた
4人でそうだよね〜!といい
口ぐちにk君の素敵だったところを言いあった
「悪いとこなかった」
「あんなん絶対女おるやろ」「きいたけど、最近別れたらしいよ、長続きせんらしい」「やばい、それ私が傷をふさいであげないと」「いや、私が塞ぐんで」「は?」
「フットサルやるんと」「えー!はちみつレモンつくって応援いかな」「はちみつレモン(笑)」「は?」「料理も好きなんと」「えー!食べさせてほしーい!」「k君家のエンゲル係数が爆上がりするからやめたげて」「は?」
途中何度かギスりながらも盛り上がり
もしk君から連絡があっても恨みっこなしね、という約束をし解散した
友人から、肉美は自分からk君に連絡しないの?ときかれので
「まっ、あっちから連絡きたら?返事してあげようかな、くらいかな?やっぱ男性側から連絡がほしいっていうか?ちょっとくらい強引な所、みせてほしいっていうか?」というようなことを答えた(友人からは2度目の「何様だ」を頂いた)

次の日、職場でランチ休憩中に、k君から個別でLINEがきた
選ばれた!!私がシンデレラよ!!
脳みそが痺れた
でもここですぐに返事をすると「まってました」と言わんばかりじゃないの、という頭の中のもう1人の私と、「LINEがきたらすぐ返す、その方が気持ちがいいのでは?」というもう1人の私が戦い後者が勝った
返事がはやくて悪いことないだろ
LINEをひらいてみると、昨日の合コンへ参加してくれてありがとう、という感謝と、またみんなでのみにいこうね、という重くない誘いの言葉、そして締めくくりに仕事頑張って、というエールが綴られていた
私の彼ピ、完璧じゃん?
慎重に言葉を選び、返信する
とは言ってもここで浮かれ騒いでしまってはいけない
クールにいこう、私はアラサーだ

いつもの友人への返事の例

クールを念頭に置いたk君への返事

絵文字スタンプ…連打…????
完全に浮かれ騒いでしまった

ただ連絡がきた、という事実は揺るぎないので、さっそくマウントをとらなくてはいけない、私の男に手を出すな、と思い立ち
女性陣のグループLINEに
「k君から連絡きましたぞよ〜!」と報告したら、みんなに同じような文面の連絡してたということが判明
ただのマメな男だった、これは恥ずかしい。
その日はおとなしく寝た

その何日か後、職場で休憩中、
友人から「k君からごはん誘われた♪」と連絡がはいった
やりやがったな
私と先輩たちは口々に、「嘘でしょ」「いつ?」「ランチ?ディナー?」「どこ行くの?」などと矢継ぎ早に質問した
友人はデバイス越しでもわかるくらい嬉しそうに「ひとまずランチ♪」と返してきた
先程からその文末の音符をやめな
しかし最初のデートがランチとは、下心を感じさせない最高の采配
でもわかる、友人は可愛いし、オシャレだし、朗らかだし、思いやりあるし、気遣いの達人だし、人の機微に聡いし、ほんとうにいい奴なんよ、私だってできたら友人と付き合いたい
負けたわ、貴方達お似合いよ
私と先輩たちは白旗を振り、「頑張って」「結婚式にはよんで」「お幸せに」などと打ち込み、死んだ魚の目で仕事に戻った
しかしこんな完璧な人間がいるもんかね、なにか決定的にまずいところがあってもおかしくなさそうだ。酸っぱい葡萄的にそう思った。この伏線はこの後すぐ回収される。

友人はk君とウキウキでランチデートにいった
結論をいうと、マルチ商法への勧誘だった
まずテーブルに本を2冊おかれ(なんかきいたことある題名の本、あまり覚えてないとのこと)内容を紹介され
はじめに30万かかって
その後は月に10.20万かかるけど、人脈を広げていけば、その分ちゃんと返ってくる
友だちをたくさん紹介してくれれば、はやく統括まで上がることができる、そしたら後は楽ができて、お金が勝手にはいってくるだけ
だいたいそのように説明されたそうだ
友人は真っ青になり「考えておくね」と返事をしすばやく帰宅したとのこと
帰宅後女性陣のグループLINEで
「勝手に期待した私も悪いが悲しい」と嘆く友人
慰める我々
その後友人が連絡を返さなくなったからなのか、先輩達へもご飯の誘いがあり、最終的に私にもご飯の誘いがきた。私が最後ってなんだ
「こいつしか残ってねえじゃないか」感がすごい
「ごめん、仕事が忙しくて」と2度断ったところ、連絡がこなくなった
やはりあった、決定的にまずいところ
完璧な人間なんていないんだね
今後k君がマルチ商法から抜けられるか
巨万の富を得るかはわからないけど
マルチ商法ごとk君を愛してくれる人に出会えるように願っている
私にはできなかったけれど